新技術
2019.07.18ちょっw、市販の超撥水スプレー「ネバーウェット」を利用した画期的な細胞培養方法が発表される。 /578
2018.03.01DNA/RNA検出に革命!CRISPR/Cas12およびCRISPR/Cas13を使って標的核酸の有無を4種類同時検出可能 /105
2017.09.14細胞に金属ナノ粒子を入れ、マグネットで細胞筋トレさせると良い心臓筋肉組織が出来る /96
2017.07.14ゲノム編集技術CRISPR/Casを用いて大腸菌集団に動画データを分散記録、読み出すことに成功 /117

2019.07.18

ちょっw、市販の超撥水スプレー「ネバーウェット」を利用した画期的な細胞培養方法が発表される。

↑BTW


出展:Naked Liquid Marbles: A Robust Three-Dimensional Low-Volume Cell-Culturing System.ACS Appl Mater Interfaces. 2019 Mar 13;11(10):9814-9823.
オーストラリアのグリフィス大学の研究者らが発表。超疎水性コーティングしたプレートに液体を入れると液体は接触角152度となり、写真のような球状になります。この中で細胞を培養するというものです。

動物や植物などの多細胞生物の細胞は周辺のモノに接着する性質があり、プレートの中では接着する部分が多いので不自然に張り付いた形態となっており本来の性質を示させることが出来ません。これらの細胞は周辺に接着する人工的なモノが無い環境で培養して初めて多細胞からなる組織・臓器形成を行うことが出来ます。このような状態で出来る細胞の塊をスフェロイドとかオルガノイドとか呼びます。

これはこのコーティングを自宅で自分で再現することが出来ればDIYバイオ研究にも便利に使えそうだな・・・・どんな組成のコーティングかな?組成公開してるかな?って論文を読み進めたら・・・・・

出展:Naked Liquid Marbles: A Robust Three-Dimensional Low-Volume Cell-Culturing System.ACS Appl Mater Interfaces. 2019 Mar 13;11(10):9814-9823.

ちょ、TVショッピングとかでお馴染みの超撥水スプレー「ネバーウェット(NEVER WET)」じゃねえか(笑)。この研究では日本で売られている1液タイプでは無く海外でのみ販売されている(?)2ステップタイプのNever Wet Neo Multi-purposeを使っているようです。Amazonで買えます↓

超強力撥水防水スプレー Never Wet(ネバーウェット) (amazon)

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2018.03.01

DNA/RNA検出に革命!CRISPR/Cas12およびCRISPR/Cas13を使って標的核酸の有無を4種類同時検出可能

↑BTW

 診断・分析に革命を起こす新しい技術が出てきました。「CRISPR/Cas9」はゲノム編集に革命をもたらしました。それはこの分子が目的とする配列を正確に切断することが出来るからです。また、効率は100%ではないですが別の配列に書き換えることも可能です。

※CRISPR/Cas9システム・・・・・・Cas9酵素CRISPR配列(DNA)で指示される(相補的な)2本鎖DNAを切断することを2本鎖(ゲノム)編集システム

 今回報告されているのはCas9と似た性質を持つCas12およびCas13という酵素を活用したDNA・RNA検出技術です。

 Cas12Cas13は遺伝子編集に使われるCas9と同様に指定したDNAまたはRNAを切断する類似の酵素として知られていましたが、今回研究者らは、この2つの酵素が、これまで知られていた機能に加えて、標的とする核酸を切断すると同時に、周囲のDNA、RNAを切断することを見出しています。Cas12aは1本鎖DNAなら何でも切断し、Cas13にはいくつか種類があり、それぞれ好みの配列のみを切断するようです。

 結果として研究者らはこの4つの酵素を使い、切断されると蛍光を発する核酸を使うことでサンプル中に含まれる特定のDNA1種類、RNA3種類の存在の有無を同時に検出出来ることを示しています。


Multiplexed and portable nucleic acid detection platform with Cas13, Cas12a, and Csm6.Science. 2018 Feb 15. pii: eaaq0179. doi: 10.1126/science.aaq0179. PMID:29449508

 これで何が出来るかといえば、B型肝炎ウイルスと、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、エイズウイルス、風疹ウイルスが含まれているかどうかを混ぜるだけで検出することが可能であることを示しています(感度の問題はありますが。。。)。

 これまでDNAやRNAの分析には加熱したり冷やしたり、時間をかけて増幅したりという工程が必須でしたが、今回発見された新しい分析方法を使った新しいタイプの感染検査キットが薬局やコンビニに並ぶ日が来るかもしれません。「インフルエンザウイルスがあると光るマスク」なんて作れるかもしれませんよ。


2017.09.14

細胞に金属ナノ粒子を入れ、マグネットで細胞筋トレさせると良い心臓筋肉組織が出来る

↑BTW


金属ナノ粒子を細胞に取り込ませ、磁石で挟む概念図(出典:A 3D magnetic tissue stretcher for remote mechanical control of embryonic stem cell differentiation.Nat Commun. 2017 Sep 12;8(1):400. PMID:28900152)
 京都大学の山中先生が見出したiPS細胞を使って様々な臓器の細胞が作り出せるようになっていますが、そこから機能的な臓器を作る研究はまだまだ不十分といえます。今回、フランスの研究者Claire WilhelmらがES細胞から作り出した心臓の筋肉細胞にナノサイズの金属粒子を入れ、磁石で挟み込み、「伸び縮み」刺激を加えることで、心臓の筋肉細胞として必要な遺伝子発現が増強されることを報告しています。

(省略されています。全文を読む


2017.07.14

ゲノム編集技術CRISPR/Casを用いて大腸菌集団に動画データを分散記録、読み出すことに成功

↑BTW


CRISPR/Cas encoding of a digital movie into the genomes of a population of living bacteria. Nature(2017)doi:10.1038/nature23017/Extended Data Figure 1
 動画データといっても非常に小さな、短時間のもの(36ピクセル×26ピクセル×5フレーム)ですが、生物(大腸菌)のゲノムに任意のデジタル情報を記録し、1週間程度培養・増殖させた後に読み出すことに成功した研究が報告されています。

 情報を遺伝子配列に変換するルールは、核酸が4種類すなわち2ビットであることを利用し、C=00, T=01, A=10, G=11という具合です。動画を構成する36ピクセル×26ピクセルの各画像は各ピクセルの位置と色、さらに読み出し時の正確さの確認に用いるチェックサムデータを含む104個の短いパケット配列に分割されます。これらの人工核酸はそれぞれがゲノム編集システムCRISPR/Casに用いることの出来る配列となっており、これらを人工核酸配列をまとめて大腸菌に遺伝子導入しています。

 面白いのは1匹の大腸菌に全情報を入れるのではなく、大腸菌集団に分割して情報が記録されている点です。集団内の動画情報を注入された大腸菌は、それぞれが増殖しますが、実験では1週間培養した後でも、丸ごと溶かして核酸を抽出し、ショットガン遺伝子シークエンサーでゲノム配列を読み取ることで元の動画情報を取り出せることが示されています。

 今回成功した情報量は、我々が現在コンピューターで使う情報量に比べれば微々たるもの(2.6kbyte)ですが、この方法はいくらでも改良、改善の余地があるはずです。さてどんな使い道が出てくるのでしょうか。

 DIYバイオ的に面白い使い方無いでしょうか。自分の腸内細菌群に秘密情報を隠すのはどうでしょう。