自分でサーマルサイクラー(PCR装置)を作ろうと思います。ペルチェを買ってきて冷却・加熱能力をテスト
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2017.10.22

自分でサーマルサイクラー(PCR装置)を作ろうと思います。ペルチェを買ってきて冷却・加熱能力をテスト


 1年半前にKickstarterに10万円以上も出して出資した遺伝子実験用オールインワン装置「BentoLab」が当初の出荷予定から1年経過しても送られてくる気配が無いので自分でサーマルサイクラーを作ろうと思います。

 最近、本当にクラウドファンディングとか計画する連中のルーズさにはウンザリ。クラウドファンディングの仕組みも良くないかもね。いったん資金調達した後のプロジェクト進行に対するインセンティブが無いからね。

買ってきたのはAmazon.co.jpで売っていた下記のペルチェユニット。「ペルチェ」とは電流を流すと、表から裏に温度を移動させる素子です。パソコンの中でCPUの冷却とか、ビジネスホテルの小さい冷蔵庫とかの冷却に使われています。




2つのファン付きで送料込み2220円ほど。

上下には大きなファン(90mm四方)と小さなファン(40mm四方)がついており、放熱用のアルミ製ヒートシンク(100mm四方、45mm四方)を挟んでペルチェが設置されています。ファンはいずれも12V(ブラシレス、DC)仕様です。

ペルチェ自体は「TEC1-12706」という型番で300円ほどで買えます。↓
スペックシートを見ると、最大電圧15.4V、最大電流6A、最大温度105℃。サーマルサイクラーを作るにはファンは1個で良いので大きな90mmファンを使う事として、小さな40mm四方のファンは取り外したところペルチェが見えました。

手前にペルチェが露出しており、奥側はファンがついています。ユニットの右側がファンを動かすための12V電源、左側が可変で電圧をかけられる安定電源装置です。

遺伝子を増幅するPCR反応は、95℃、60℃、70℃の温度変化を1分以内に繰り返し行うことが必要です。
そこで、とりあえずペルチェに電圧を加えてみて、どれぐらい冷やしたり、温めたりできるか調べてみます。

↓上から見たところ、


90mmファンには12Vを別電源で加えて全力で動作させておくこととして、ペルチェに電圧を変化させることの出来る安定電源をつなぎ、温度を調べました。温度はサーモグラフィーで測定。

●温める能力テスト
実験時の室温は22℃ぐらいです。




かけた電圧電流ペルチェ表面の温度
1V 0.3A 30℃
2V 0.6A 40℃
3V 0.8A50℃
4V1A60℃
5V 1.24A 70℃
6V1.4A80℃
7V1.5A 88℃
8V1.64A 98℃
9V 1.9A 110℃

8V、1.64A(12Wぐらい)流すことでPCR反応に必要な95℃を作り出せることが分かりました。これはペルチェの反対側でファンが全力運転している状況ですので、ファンを切ればもっと低電力で実現可能と思います。

市販のサーマルサイクラーもファンは冷却時のみ動作しているような気がします。

●冷却能力テスト
次に冷却能力をチェックしました。これは、もしかしたら必須ではないかもしれませんが、PCR反応をうまく、短時間で行うためには速やかに冷却させることが好ましです。

これは、ペルチェに入る電極をプラスとマイナス逆にして冷却能力をためしてみました。




かけた電圧電流ペルチェ表面の温度
1V0.3A 15℃
3V 1A10℃
6V 2A -10℃
9V 3A -18℃
12V 4A-16℃

わずか1V、0.3Aで室温からの温度低下が確認出来ます。そして6V、2Aで-10℃に到達。その後、9V、3Aで-18℃に達しましたが、それ以上は冷えないようです。

このユニットのみでPCR反応に必要な加熱、冷却は行えることが分かりました。これからサーマルサイクラー作っていきますが、1万円以下で作れるんじゃないかな。

溶液を入れる0.6mlチューブを挿入するアルミのヒートブロックをどうやって作るかが一番の課題と感じます。アルミブロックにドリルででかい穴を開ければよいかな?
温度制御は、Raspberry Piを使う予定です。電圧を可変にするのは面倒だし金かかりそうなので、12V電源に反転回路(リレーを使う)をつなぎ加熱と冷却を変更、そして温度制御はSSR(ソリッドステートリレー)を使って、PWM(Pulse Width Modulation)方式で電力量をコントロールすることで実現しようかと思っています。

以下参考

Category:PCR装置を作ろう

 Keyword:サーモグラフィー/4



※当サイトで実施している実験において使用している試薬・機器は全て一般の人が購入・入手可能なものです。入手方法は過去に紹介されているはずですが、見つけられない場合はコメント欄等でお問合せください。

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001 [10.23 02:21]【ふぁ】改めPyridazine:無理せずに中古を買えってw自作品じゃキャリブレーションを引き受けてくれる検定業者いないぞ。何はともあれeBayを見てみるんだ。もし買うならばPCR機の電圧がマルチかどうか、故障品の出品でないかは要チェックな。自作するならロボットの方がいいと思うぞ。マルチチャンネルピペットがあるとはいえ、手作業は疲れる…。 (118)

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