インスリンの作り方をオープンソース化する「オープンインスリン」プロジェクトは世界で一番意義あるDIYバイオプロジェクトかも
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2018.07.20

インスリンの作り方をオープンソース化する「オープンインスリン」プロジェクトは世界で一番意義あるDIYバイオプロジェクトかも


先日紹介したNHKのクローズアップ現代+

 でも取り上げられた「オープンインスリン」プロジェクトは今、世界で一番意義あるDIYバイオプロジェクトかもしれません。これが実現した暁にはノーベル賞級かなと思います(技術的にではなく社会的に。ですが)。
 糖尿病は国内で予備軍を入れて1000万人、世界では4億人の患者がいて、今後増え続けると予想されれている病気です。病状が進行した場合には体内で不足する「インスリン」というホルモンを注射してやる必要がありますが、タンパク質で出来ているこのインスリンは製造に細胞・細菌培養、酵素処理、精製などの高度が技術が必要で、製薬会社しか作ることが出来ません。

バイオの知識がある人向けに下記にインスリンの構造を示しますが、単なる1本鎖では無く、「プロインスリン」というペプチドが奇妙な形でS-S結合で連結されたのちに、不要部分が酵素により除去され「インスリン」が出来上がります。

図の出展元:インスリンの分泌量って? | 医師水野のアメブロ
すなわち単なる「タンパク生産」の知識だけでは不十分で「酵素の準備」「不要部分の除去」の工程が必要になります。(完成したインスリンに含まれる2本のペプチドのみを直接作って混ぜても正しくS-S結合が出来ず正しい構造にならないことが知られています。)

 日本のような国民皆保険がある国では患者さんも必要なインスリンを月1万円以下で入手出来ますが、外国ではそうではありません。アメリカでは月5〜6万円必要で、発展途上国では、よりインスリンの入手が困難であり糖尿病になることはすぐに生命の危険と隣り合わせの生活を余儀なくされることを意味します。

 オープンインスリンプロジェクトはこの患者さんにとっては「命」そのものであるインスリンを簡単に作る方法を開発し、オープンソース化し、誰でも作れるようとすることを目指すものです。

 このプロジェクトが成功すれば、途上国などで、専門知識がある人がオリジナルブランドのインスリンを製造し安価に自国民に提供を開始したり、中には自分用のインスリンを自分で作ってしまおうという人も現れるかもしれません。

 インスリンは現代社会において、バイオ技術によってのみ作ることの出来る最も重要なタンパク質なのかもと思いました。今後も本プロジェクトをウォッチしていきたいと思います。

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