2022.11.24
細胞に磁力をかけて血清無しで増殖を促進する技術。培養肉や再生医療への利用が期待
シンガポール国立大学(NUS)の研究です。
出典:Brief exposure to directionally-specific pulsed electromagnetic fields stimulates extracellular vesicle release and is antagonized by streptomycin: A potential regenerative medicine and food industry paradigm. Biomaterials, Volume 287, August 2022, 121658
研究では1.5mT(ミリテスラ)の磁力を「水平方向」「Upward」「Downward」の3つの条件で作用させています。Upwardとは培養プレートの底にN局、上にS局を置く方向、Downwardはその反対で上にN局、下にS局を置く方向。不思議なことにDownwardで作用させた時にUpwardよりも強力に作用があるようです。
磁力はパルス的に15Hzまたは50Hz(1秒間に15回または50回)で10分間だけ作用。強さとしては1.5mT(ミリテスラ)とあり、100均で売っているネオジウム磁石が数百mTの強度があるらしいので、そんなに強い磁力では無いようです。電磁石を使って電気的にパルス刺激するのも簡単そう。
磁力が直接細胞増殖を促すのではなく、磁力刺激で細胞から増殖を促す因子が放出されるようです。実際に、増やしたい細胞に直接磁力をかけなくても磁力をかけて培養した細胞の培養液を使う事で増殖促進効果が見られています。その作用は血清5%を上回る効果とのこと。
何が放出されているかに関してはEV(細胞外小胞)の放出が見られるとのこと。近年、生体内、血液中には細胞膜につつまれた細胞の切れ端のような極小のEVが多数含まれていることが分かっており、細胞間のコミュニケーションや、癌細胞が自分に適した環境を作るのに利用されていることが明らかになり盛んに研究されています。
研究ではEV(細胞外小胞)の中身については解析されていませんが、それ以外にも培養液の可溶性成分に関してIrisinの上昇と、FGF-21(有意差無し)、FSTL-1(有意差あり)の濃度減少がみられるそうです。
新世代のピップエレキバンの開発が始まりそう。
Category:実験方法
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