2025.07.21
小宮りさ麻吏奈氏の個展CLEAN LIFE(クリーン・ライフ)を見に行ってきた。DIYおうちバイオ実験のテクニックをアート作品に昇華
会場は新大久保近くの新宿WHITE HOUSEという場所。住宅地の中にこんな個性ありまくりのツタに覆われた建物が。。。これがWHITE HOUSEのようです。
最初、建物の入り口が分からなくて困りました。物凄いツタに圧倒されましたが下記を見ると由緒ある場所なんでしょうか?
小宮りさ麻吏奈氏
小宮氏はShojinmeat Projectの活動で知り合いになったアーティストです。以前からShojinmeat Projectで確立された自宅で動物細胞をDIY培養するテクを取り入れ、自分の細胞を培養したり、人間から初めて樹立された株化細胞であるHeLa細胞(ヒーラ細胞)に興味を持ちアメリカまで行ってHaLa細胞の元になったヘンリエッタ・ラックスさんのお墓参りに行ったりと様々な活動していることを聞いてました。今回開いた個展のタイトルはClean life。
↓個展の告知ポスター
個展は2025年7月5日〜7月27日まで開催中です。開館時間は14:00〜20:00。駅から会場に続く住宅地には美味しそうな飲食店が多数あるのでご飯を食べてから行くと良いでしょう。
展示内容に関しては展示説明をコピペすると
小宮はこれまで、自身の身体を起点とし、クィア的視座から浮かび上がる新たな時間論への関心から「新しい生殖・繁殖の方法を模索する」ことをテーマにパフォーマンスや映像、 場所の運営、漫画表現などメディアにとらわれず活動してきました。今回は、かねてより続けてきた細胞培養、特に培養肉にまつわるリサーチをインスタレーション作品として発表します。培養肉というテクノロジーを通して細胞という生命の極小単位に目を凝らす中で見えてくる生政治ー人間と動物や自然、資本、環境などのからまりの中で生まれる生態系。そのあわいで発生する生と死、人間中心主義的な政治や倫理の線引きの中で、いかにそれが社会や制度によってコントロールされているものなのかをリサーチを通して提示します。動物を苦しませない倫理的な、つまり潔白で「クリーン」な肉としての培養肉、細胞の権利、人工妊娠中絶、ヴィーガニズム、そしていま世界で起きている虐殺…我々を取り巻く生の政治を、細胞を通して見つめ、投げかけます。 |
小宮氏はいつも性や肉体、社会のあり方に新たな視点を投げる形のアートを発表しているように思います。今回は、最新テクノロジーと倫理の矛盾を切り口に「命とは何か」「どこまでが人間中心なのか」という問いを、細胞や培養肉を素材に可視化している感じでしょうか。
この後で写真付きで少し紹介しますが、おうちDIYバイオテクノロジーとして素晴らしく、普通の人には身近ではない「細胞培養」を実践しアートに昇華しており、私のような本業の研究者には考えさせるものがあります。この説得力は一般人ではなく、研究者などによく伝わるかもしれない。
個展会場1F
部屋に入ったところ
様々な展示がされています。丸いスクリーンは二階からプロジェクターで投影されている動画だと思ったのですが、違うことに後で気が付きました。
展示されている自作の細胞培養用インキュベーター。

中央のディッシュ内で培養液に使っているのは、なんと小宮氏自身の足から採取した細胞とのこと。入れ墨のスタジオで細胞を採取してもらったんだとか。金属製のケースの中は細胞培養に適した37度に維持され、ステッピングモーター搭載の超低速ペリスタポンプで自動で新鮮な培養液が絶えず供給され、廃液は下のボトルにたまるようになっています。
会場のあちこちに展示されているのは細胞を培養して作った作品です。

これはHeLa細胞を培養したもの、赤く染まっている部分がHeLa細胞、白く抜けている部分が細胞の無い部分だと思われます。
こちらはニワトリの有精卵から採取した筋肉細胞を使った作品ですね。

左と、真ん中のディッシュが2025年5月24日〜27日に培養したものみたいです。P1と書いてあるので継代1回目?右はP2と書いてあるので2回継代培養したものと思われます。
個展会場2F
展示会場は2階建てになっており、2階に登ったところです。各種展示と併せてこの顕微鏡がおいてあります。
これも技術的にスゴイ。顕微鏡のステージ上には自製されたステッピングモーター駆動のXYステージが載せられており定期的にディッシュを上下左右に動かし撮像場所が変更されています。そして接眼レンズ部分にカメラユニットが挿入されておりPCを介してプロジェクターにつながっていました。そう、1階で丸いディスプレイに映されていたのは動画ではなく、リアルタイムで撮影されているこの顕微鏡上の細胞だったのですね。
販売品など
展示されている細胞培養アートのプレートは販売もされています。
培養された細胞といっても培養後に樹脂で固定されているので半永久的に飾って楽しめると思います。これ売れた時の販売金はHeLa細胞の元となった「ヘンリエッタ・ラックス」氏の財団に送るのだとか
ヘンリエッタ・ラックス - Wikipedia 21 users
小宮氏
会場に本個展の主である小宮氏がいました。
小宮氏は最近、執筆したマンガが出版されたばかりです。
本人が会場にいたらサインしてもらおうと家から購入した本を持っていたのでサインしてもらいました!

会場の傍らの展示スペースではない部分にある冷蔵庫の中が・・・

飲み物と一緒に交換用の研究用細胞培養培地が入っているのがシュールですね。DIYおうちバイオ実験の醍醐味です。
今回の個展の経緯やHeLa細胞や自分の細胞を培養しようと思った経緯などについてのプチマンガが今年の夏コミ2025(C106)でShojinmeatから販売される同人誌に掲載されるそうですよ

販売場所はC106 (2日目:2025年8月17日(日))東5ホールのブース「ニ34b」です。
Category:バイオハッカーイベント
Keyword:Shojinmeat/25
顕微鏡/372
※当サイトで実施している実験において使用している試薬・機器は全て一般の人が購入・入手可能なものです。入手方法は過去に紹介されているはずですが、見つけられない場合はコメント欄等でお問合せください。
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